りんとレモン

思ったことをつらつらと

最高で最悪な悲劇

「財布に金をいれておけ」



運命を変えてしまった1枚のハンカチ





嫉妬が招いた恐ろしい復讐劇。

ひとりの男の巧みな作戦と行動によってそれぞれの地位も人々もボロボロと崩れていく。



人を殺し、自分を殺す。最高で最悪な悲劇。






そんな劇の絶対的なキーパーソンであるイアーゴーを演じた神山くん。

コロコロと表情を変えながら膨大かつ内容も言い回しも独特なセリフを流暢に喋り、欲に塗れながらも自分で自分の首を絞める、力強く、でもどこか切ないイアーゴーを演じた神山くん、そこにいつもの神山くんの面影は一切なかった。


何よりも驚きなのは、イアーゴーは本来今井翼くんがするはずだったということ。代役としてこの大役を任せられた神山くんのプレッシャーといったら、それはもう私たちには想像がつかない。でもそんなプレッシャーさえも感じさせない、見ている人をこの恐ろしい悲劇に引きずり込んでいく圧巻の演技だった。


愛に飢えたイアーゴーはいつもの神山くんとは正反対だからこそ、見応えがあった。誠実な一面とは裏腹に邪悪な表情を見せるイアーゴー。最低なのに、苦しいのに、目が離せなかった。



物語の終盤、イアーゴーが殺意に満ちた表情でロダリーゴーを勢いよく刺して殺すシーン。上手3列目に座っていた私はあのシーンが目の前だった。今でもあの酷く醜い顔をしたイアーゴーが脳裏から離れない。4時間の中で一番衝撃だった。




劇中に出てくる登場人物だけでなく、見ている人の心も掴んで離さないイアーゴーは恐ろしく狂気的だった。だから、またいつか見たい。いや、でも、もうあんな神山くんは見たくないなぁ、そう思えるくらい衝撃的な舞台だった。



差別とか、嫉妬とか、愛とか。

いろんなことを考えさせられた舞台だった。



舞台は1年半も前の話だけど、

オセローという素晴らしい「悲劇」を私に教えてくれてありがとう。神山くん。


またいつか神山くんの舞台を見たいな。